フローサイトメトリーを今まで以上に有効に利用するための新しい検査法の開拓

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454619
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 杏林大学
• 研究代表者: 中原 一彦 杏林大学, 医学部, 教授 (70101095)
• 研究分担者: 松崎 潤 杏林大学, 医学部, 助手 (80241008)
• キーワード: フローサイトメトリー / 細胞周期 / 細胞内pH / リンパ球表面抗原 / 抗原定量化

研究概要

本研究は、主として表面マーカー検索のみに限られているフローサイトメーターの利用法を、他の検索や解析に利用するための新しい方策を開発するのを目的とする。
1.Bromodeoxy uridine(BrdU)とiododeoxy uridine(IrdU)を用いた細胞周期(cell cycle)の検討
当初、BrdU,IrdUおよびpropidium iodide(PI)による同時三重染色を行なう予定であったが、染色過程の関係でそれが困難であることが判明した。そのためBrdUとIrdUを別々に染色して検討することとし、実際に若年ラット胸腺細胞をBrdU,IrdUで連続的にパルスし、in vivo,in vitro投与におけるdoubling timeを測定、比較した。その結果、in vivoで34.7時間、in vitroで34.0時間と良好な結果が得られた。
2.細胞内pH(pHi)と細胞表面抗原との二重染色による細胞サブセット毎の活性化の検討
最近になってpHiの測定データにばらつきを生ずるようになった。その理由として、従来のラット脾細胞を用いての検討をヒトに応用するために、ヒト末梢血リンパ球に切り換えたところ、安定したpHiを得るためには、蛍光指示薬であるbis(carboxyethy1)-carboxyfluorescein(BCECF)がヒトでは多く必要とするためと判明した。現在BCECFの濃度を上げてデータを集積中である。
3.リンパ球表面抗原量定量化のための新指標設定の試み
健常成人リンパ球を用いて細胞表面マーカー二重もしくは三重染色を行ない、リンパ球分画を前方散乱光により細分割し、その細分画ごとに蛍光強度の平均値を測定して両者の関係から新指標を算出した。CD4抗原発現における新指標は健常人では一定の値を示し、今後、疾患の解析に応用することが可能と思われる。

研究成果

• [文献書誌] 中原一彦: "フローサイトメトリー" 検査と技術. 22(増刊号). 74-76 (1994)
• [文献書誌] 田坂哲也: "共焦点レーザー走査型顕微鏡" 臨床検査. 38. 841-843 (1994)
• [文献書誌] 中原一彦: "悪性リンパ腫の診断、免疫学的マーカー診断" 内科. 74. 229-233 (1994)
• [文献書誌] 中原一彦: "白血病細胞の表面マーカー" 臨床病理. 臨時増刊. 186-189 (1994)
• [文献書誌] 中原一彦: "リンパ球表面マーカー、-two-color,three-colorを中心に-" medicina. 31(増刊号). 654-658 (1994)
• [文献書誌] 中原一彦: "臨床検査ひと口メモ" モダンメディア. 40. 580-585 (1994)
• [文献書誌] 中原一彦: "白血病の病因および病態生理、白血病細胞表面抗原と病態" Modern Physician. 15. 161-164 (1995)
• [文献書誌] 中原一彦: "フローサイトメトリー" Surgery Frontier. 2. 86-92 (1995)
• [文献書誌] Yoneyama,A: "Increased levels of soluble CD8 and CD4 in patients with infectious mononucleosis." Brit,J.Haematol,. 89. 47-54 (1995)
• [文献書誌] Aoki,K: "Molecular basis of chromosomal translocation:Octagonal structure of a recombination hotspot-associated protein,Translin." Nature Genetics. (in press).