研究課題
本研究は、がん告知を受けた患者が自らQ0Lを高めてがんと共に生きていくことを支える系統的な看護アプローチの開発を目的とした。告知を受け2ヵ月から1年前後の外来通院している患者・家族を対象に「がんとの共生を支える援助プログラム」を試行した。プログラム思案は、昨年の基礎的研究と文献的考察を基に、患者教育の原理を概念的枠組みにして作成した。プログラムの内容は、がんとその治療法やストレスを上手にコントロールし心身の安定を保つ方法、及び日常生活上の問題への対処法について計5回のセッションを講義形式やグループワーク形式を用いて行った。プログラムの効果は、プログラム受講者を実験群とし実施前後にSTAI、Q0L index、Jalowiec Coping Scaleの測定用具並びに参加してもたらされた変化などの質問紙により評価した。尚プログラムを受講しない者を対象群として、実験群と同じ測定用具を用いて比較調査した。対象の特性として、実験群は男性12名、女性13名の計25名で、平均年齢56.8歳、疾患は乳癌12名、消化器癌9名、泌尿器癌4名であった。対照群は男性7名、女性15名の計22名で、平均年齢54.7歳、疾患は乳癌11人、消化器癌8名、泌尿器癌3名であり、対象者の特性は両群共に有意差がみられなかった。プログラム実施前後の比較では、実験群において状態不安得点が、実施前に比べ有意(P<0.01)に減少した。一方実験群、対照群の比較では、STAI、Q01、Coping Scale共に有意差は認められなかった。しかし実験群の質問紙内容をみると、プログラムに参加してがんになったことによる孤立感やがんを学ばなければという焦りが取れ〈気持ちが楽になった〉、がんという自覚を持ち今後の生き方を前向きに考えるという〈がんである自分に対する認識が変化した〉、プログラムで学んだことを取り入れ生活に活かすという〈日常活が改善した〉などプログラムに参加したことの利点を殆どの人があげ、プログラムの有用性を認めている人が多かった。今回実験群、対照群の間では有意差がみられず、プログラムの効果を統計的に示すことができなかったが、今後は標本を増やすと共にプログラムの内容を検討して、より質の高いプログラムを考案していくことが課題であると考える。
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