寝室の温熱環境及びマットレスの条件が睡眠に及ぼす影響について、主として体動や体圧、睡眠中の温熱生理学的視点から検討を加えた。まず、基礎的検討として、各季節の寝室温熱環境条件を設定し、寝具にはスプリング、ウオーター、ジェルマットレスの3種を用いて昼間2時間入床させ、一定時間仰臥と横臥をさせた際の寝床内及び身体側の種々の変化を記録し、検討した。次いで中間期の温熱環境条件下で終夜睡眠を取らせた際の同様な測定を行った。得られた結果から、以下にその主な知見を記す。 1.皮膚接触圧の測定結果から、圧迫が大きく罹る身体の部位は臀部、肩胛骨部などであるが、被験者の感覚申告では腰部の圧迫の訴えが最も多かった。また、測定した部位においては圧迫量と体動発現との間には、明確な関連性は認められなかった。 2.3種のマットレスのうちジェルとウオーターはスプリングに比べて体圧分散がなされており、身体部位の圧迫も少なく寝具の弾性の特徴も明確に表れていた。 3.マットレスの違いによる血流量の差は明確には表れず、むしろ血流は皮膚温の影響が優位に表れていた。また、スプリングでは体動によりそれまでの圧迫が緩和された際の反動として、血流量の一時的な増加が多いことから、それまでの局部的な圧迫が大きいことが窺われた。 4.寝室環境条件による寝床内気候への影響は、スプリングにくらべてジェルやウオーターは湿度が有意に高い傾向が認められ、マットレスの側材の吸湿性が大きく影響していることが示唆された。 5.終夜睡眠中の体動回数は、ジェルやウオーターで有意に少なく体圧分散の効果が表れており、結果として睡眠の質にも効果が認められた。
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