1.高所における最大運動時の筋肉酵素動態に及ぼす影響: 一流男子サッカー選手および大学男子陸上長距離選手について2000mおよび3000m相当高度の低圧シミユレーター内でのペダリングおよびトレッドミル走の最大運動を行わせ有気的作業能および筋肉酸素動態について検討した。筋肉酸素動態は左脚大腿部外側広筋表面に組織SO2・Hb量モニターのセンサーを装置しLEDによる3波長、2受光方式を用いて組織StO2、tHbなどを測定し、SaO2-StO2にtHbを乗じて組織O2摂取量VtO2を求めた。 1)一流サッカー選手の3000mにおける最大運動の応答:個人別の応答特性では、低圧下運動時のSaO2低下が抑制され、逆にStO2低下が亢進し、SaO2-StO2較差が増大してVtO2の増加度の大きいことが高所耐性の優れていることを反映しているものを考えられた。2)大学男子長距離選手の2000mと3000mにおける最大運動の応答:SaO2-StO2較差は常圧下と2000mではほぼ同値を示したが、3000mでは低下傾向が認められた。高所トレーニングが低圧下運動時のStO2の低下を亢進させて、SaO2-StO2較差の増大とVtO2の増加度を高める可能性が示唆された。 II.高所トレーニングの運動時内分泌応答に及ぼす影響: 低圧シミユレーターにより6000m相当高度で3ケ月半に8回の高所トレーニングを行った。被検者は一流登山家および一般登山家の各一人ずつとし、トレーニング強度は40%VO2maxで30分間のペダリングとした。血中ACTH、ADH、血中レニン活性およびアルドステロンについて常圧下と6000m安静および6000m運動後の値を追跡、比較した。一流登山家ではトレーニング中各条件で変化がほとんど認められなかった。一方、一般登山家ではトレーニング初回の運動後に著しく高値を示し、5回以後に減弱傾向を示した。この事実から約2週間に1回の高所トレーニングによってもストレス性および水電解質貯留性内分泌応答の減弱化の誘起されることが明らかとなった。さらにADH分泌の抑制傾向から高所における運動時の浮腫などの高所障害を予防する可能性が示唆された。
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