本研究の目的は、持久的運動がインシュリン受容体遺伝子の発現に与える影響について、実験動物を用いて明らかにしようとするものである。平成6年度は「持久的運動はインシュリン受容体遺伝子の発現を増加させるか?」という点に関して、インシュリン受容体mRNA量を定量することにより検討した。Sprague-Dawley系雄ラット20匹(日本クレア、東京)をトレーニング群(10匹)とコントロール群(10匹)の二群に分け、トレーニング群にはトレッドミル走によるトレーニングを9週間負荷した。トレッドミル走は速度28m/分、傾斜6゚、30分/日、5日/週とした。トレーニング終了48時間後に、ラットをエーテル麻酔下に開腹し、ヒラメ筋、肝臓、脂肪組織を採取し、mRNAを抽出し、RT-PCR法によりインシュリン受容体mRNAの総量を定量し、β-アクチンmRNA量で補正してインシュリン遺伝子発現の指標とした。ヒラメ筋湿重量および総mRNA量にはトレーニング群とコントロール群間に有意な差は認められなかった。トレーニング群のヒラメ筋では、インシュリン受容体mRNA量に約60%の増加が認められたが、肝臓および脂肪組織ではコントロール群との間に差は認められなかった。このように、持久的運動が骨格筋でのインシュリン受容体遺伝子の発現を増加させることを明らかにした。この結果の一部は、Biochem.Biophys.Res.Commun.誌に投稿中である。
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