平成6年度からの研究で、プロトンやα-線による突然変異は、放射線の関節作用に起因する割合が高いことがわかった。次に、大腸菌染色体上のtonB遺伝子を用いた場合、旧来の報告とは異なり、欠失変異の増加はあまり見られなかった。自然変異での欠失と比べると、数塩基から数百塩基の比較的短い欠失が多く見られることが特徴である。塩基置換については、解析件数が少ないので、結論はまだ出せないが、自然変異のスペクトルとよく似ていた。生理的条件でのx-線の変異誘発作用についての情報は少ない。更に解析を続けることが必要である。 トランスジェニックスは、最近やっと一般的に利用の始まった実験系である。多くの困難が伴っており、充分に評価は定まっていないが、幾つかの点で成果が見られた。ひとつは、変異遺伝子の回収や、変異遺伝子のsequenceについてのknow howが得られたことである。次に、トランスジーンの変異がマウスの年齢に依存して上昇することが明らかになったことである。どのような変異が遺伝子のどこにおきたかを明らかに出来るなら、老化と突然変異との関係より明確に示すことが出来るかもしれない。今後はこれ等の結果を手がかりに、放射線による変異の精密な解析を行いたい。
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