研究概要 |
富山県神通川流域のカドミウム土壌汚染対策地域約1,500haの水田の土壌復元事業は,昭和54年から開始され,平成5年度末までに約500haの復元が完了した。本研究では、汚染地住民の土壌改良後のカドミウム暴露量および健康影響の評価を行い,環境改善事業の効果ならびにカドミウムによる腎障害の予後を明らかにすることを目的に,平成6年度には以下の調査を行い,次に述べるような知見を得た。 1.1983年の調査対象者174名中,1994年までに27名が死亡していた。対照地域の死亡者数(率)2名(6.6%)に対し,カドミウム汚染地域の死亡者数(率)は25名(21%)と高率であった。カドミウム汚染地域の死亡者25名中2名がイタイイタイ病にて死亡していた。 2.1983年に調査した女性住民125名を対象に腎障害に関する追跡調査を実施した。125名中10名が死亡しており,残る115名中95名(83%)が調査に応じた。対照地区住民の11年間の尿β_<2->マイクログロブリン(β_<2-m>)平均排泄量の変化率5.7%(138.0→145.8μg/gCr.)に対し,カドミウム汚染地域住民の平均変化率は105%(3061.9→6280.5μg/gCr.)と2倍以上の排泄増加をみた。すなわち対照地住民では加齢による有意な尿β_<2-m>排泄の変化はみられないのに対し,カドミウム汚染地住民では腎障害がこの10年間に進行していた。 土壌復元状況別(復元後5年以上,5年未満,復元中,未復元)の尿β_<2-m>排泄量の変化は130,58,307,121%といずれも増加しており、5年未満を除く3群のいずれも有意であった。すなわち,復元後短期間ではその効果がみられたが,5年以上では土壌復元の効果はみられなかった。
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