研究概要 |
1.富山県神通川流域カドミウム汚染地域の13集落6地区(B〜G地区)の住民中,1918年(大正7)から1927年(昭和2)に出生した女性144人について,1983〜1994年間の死亡状況を,また11集落5地区(H〜L地区)の住民中,1914年(大正3)から1929年(昭和4)に出生した女性198人について,1984〜1995年間の死亡状況を調査し,富山県全体の同年齢の女性の死亡と比較した。標準化死亡比(SMR)は,カドミウム汚染地域では100を超えており,対照地域あるいは富山県全体に比較して死亡率が高い傾向にあった。 2.B〜G地区の女性住民80人,H〜L地区の女性住民113人について,1983年あるいは1984年と,11年後の1994年あるいは1995年に尿中β_2-マイクログロブリン,α_1-マイクログロブリン,グルコースおよび総蛋白を測定した。そして両年の尿中排泄量の変化,尿細管障害有病率の変化およびを罹患率を,対照地区(A,M地区)のそれらと比較した。 (1)対照地区では,尿中β_2-マイクログロブリン,α_1-マイクログロブリン,グルコースおよび総蛋白の排泄に変化はみられなかった(ただしM地区のグルコースを除く)のに対し,汚染地区のいずれにおいても,11年後の尿中排泄は有意に増加しており,尿細管障害の進行を認めた。 (2)尿中β_2-マイクログロブリン1mg/g creatinine以上,グルコース150mg/g creatinine以上のとき尿細管障害と判定すると,汚染地区では11年後の有病率が高く,H〜L地区では有意であった。11年間にB〜G地区9名,H〜L地区26名が新たに尿細管障害を発症した。11年間の罹患率は,B〜G地区1.5/100人/年,H〜L地区2.7/100人/年となった。A地区は罹患率ゼロ,M地区は0.75/100人/年であった。各地区の土壌復元状況(水田土壌復元率)と尿細管障害罹患率との間に関連はみられず,環境改善事業の効果はみられなかった。
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