研究概要 |
mRNAから翻訳されてできるポリペプチドの全体が,必ずしも最終的に生理作用を有するタンパク質に成るのではない。例えば分泌性タンパク質や膜内在性タンパク質において脂質二重層を通過するために必要とされ,通過後は特異的に切断されるいわゆるシグナル配列と呼ばれる疎水性アミノ酸残基に富む配列がしばしばN末端に見られる。それ以外にプロ配列と呼ばれるものがある。これはシグナル配列以外のもので、最終的に生理作用を有するタンパク質中には認められず切断されてしまう部分がただ漠然とそう呼ばれている場合が多い。私たちはフォンビルブランド因子のプロポリペプチド(pp-vWF)に関して研究を行い、本物質が細胞外マトリックスに取り込まれ、細胞接着活性を有することを発見した。さらにその細胞特異性に関して検討したところ、ガン細胞特にメラノーマ細胞にかなり特異的に接着することを発見した。そこで本物質の接着ドメインをモノクロナル抗体法、タンパク質分解法により検討したところ、分子のほぼ中央部に位置する約8kDaの部分に存在することが判明した。又細胞上の本物質に対する接着受容体は、二価金属依存的であり、特異的なモノクロナル抗体の阻害実験からインテグリンのβ1ファミリーに属するものであることが判明した。インテグリンは通常αβのヘテロダイマーであるので、そのαサブユニットを現在解明中である。さらに本物質の細胞接着に関する最小機能単位を解明することも急務であり、遺伝子工学的手法及び合成ペプチド法を用いて現在実験が進行中である。いずれも近々その成果がまとまり、論文を提出できるものと確信している。
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