研究概要 |
mRNAから翻訳されてできるポリペプチドの全体が,必ずしも最終的に生理作用を有するタンパク質に成るのではない。例えば分泌性タンパク質や膜内在性タンパク質において脂質二重層を通過するために必要とされ、通過後は特異的に切断されるいわゆるシグナル配列と呼ばれる疎水性アミノ酸残基に富む配列がしばしばN末端に見られる。それ以外にプロ配列と呼ばれるものがある。これはシグナル配列以外のもので、最終的に生理作用を有するタンパク質中には認められず切断されてしまう部分がただ漠然とそう呼ばれている場合が多い。私たちはフォンビルブランド因子のプロポリペプチド(pp-vWF)に関して研究を行い、本物質が細胞外マトリックスに取り込まれ、細胞接着活性を有することを発見した。さらに接着する細胞にも特異性があることを発見した。そこで本タンパク質の接着に関与するドメインをモノクロナル抗体法、タンパク質分解法により検討したところ、分子のほぼ中央部に位置する約8kDaの部分に存在することが判明した。そこでこの部分に相当するcDNAをRT-PCR法により作成し、大腸菌に発現させて確認した。更にそれを二分するようなcDNAも作成し、N末端半分にのみ活性があることを確認した。次いで種々の合成ペプチドを準備し、最終的に、741残基の内Asp-395からGln-409に亘る15残基が細胞接着に関する最小機能単位であることを明らかにした。本細胞接着に関与する受容体に関しては、近い将来に解明されることと確信する。いずれも近々その成果がまとまり、論文を提出できるものと確信している。
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