研究概要 |
私わちは、タンパク質の生合成過程で得られる通常は生理作用がほとんど無いと考えられているプロペプチドの生理作用、特に細胞接着活性に関して研究を行っている。分子量約25万のフォンビルブラント因子が生合成される際に、アミノ酸残基数741個の分子量約10万のプロポリペプチド(pp-vWF)が得られる。前年度までの研究成果により、この比較的大きな分子の中で、分子の中央付近に位置するアミノ酸残基15の部位(Asp-395〜Gln-409)に接着ドメインが存在することが、遺伝子工学的手法および合成ペプチド法によって明らかにされている。本年度はさらにこの研究を進展させ、以下の成果を得た。 1,上述の15アミノ酸残基のペプチドを合成し、これをカラムに固定し、アフィニティーカラムを作成した。 2,このカラムを用い、細胞上の接着受容体を精製した。 3,各種インテグリンに対する単クローン抗体を用い、得られた接着受容体がα4β1,すなわちVLA-4であることを見出した。 4,もしこれが正しいとすれば、pp-vWFはVLA-4のフィブロネクチン、VCAM-1に次ぐ第三のリガンドとなり、メラノーマ以外にも白血球系の細胞にも接着することが期待された。期待通り、MOLT-3と呼ばれるリンパ系細胞の接着が確認された。 5,VLA-4インテグリンのcDNAをCHO細胞にトランスフェクトすると、pp-vWFへの新たな接着が確認された。
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