研究概要 |
1)ブタ腎Na^+, K^+-ATPaseをNa^+存在下50mM Pyridoxal 5′-diphospho-5′-adenosine (AP_2PL)で処理して得られた標品はAP_2PL probeをα鎖のLys^<480>に〜0.5/α含みNa^+に依存したATPからのEP形成能は50%に低下した。この標品をさらにfluorescein 5′-isothiocyanate (FITC)で処理するとLys 501にFITCが〜0.9/α結合し、ATPからのEP形成能は5%以下に低下したが acetylphosphate からのそれはほとんど影響を受けなかった。Mg^<2+>存在下のNaE_1へ種々の濃度のATPを添加すると、AP_2PL蛍光の速やかな減少後緩慢な増加が観察されたが、FITC蛍光の変化は検出されなかった。一方KE_2へNa^+と種々の濃度のATPを添加すると同様なAP_2PL蛍光の二相性の変化が生じたがFITC蛍光の変化は単相性で extent も rate も〜mM ATPで飽和した。以上の結果はLys^<480>に結合したAP_2PL probeがNa^+, K^+-ATPaseの同時に存在する各々2種類の高親和性部位と低親和性部位へのATP結合を認識することを示唆している。α鎖当たりのEP量、AP_2PL, FITC, 及びOuabain結合量からNa^+, K^+-ATPaseの機能的単位は、(αβ)_2もしくは(αβ)_4と推定される。 2)新規に見い出したブタ胃H^+, K^+-ATPaseα鎖のTyr^<10>とTyr^7の他にSer^<27>が酵素標品中のKinasesによりリン酸化されることを証明した。またSer^<27>のリン酸化が酸分泌刺激によって上昇するとされるCa^<2+>に依存することも見い出した。Ser^<27>は内因性のSer-kinaseのみならず、外部から加えたC-キナーゼ及びA-キナーゼによってもリン酸化された。これらTyr及びSerのリン酸化は可逆的で内在するフォスファクターゼで脱リン酸化された。リン酸化反応のCa^<2+>濃度依存性、C-キナーゼの活性化因子の効果及び抗C-キナーゼ抗体との反応性から、内因性のSer-キナーゼはC-キナーゼであると結論した。一方、Tyr-キナーゼをCHAPSで可溶化後、精製を試み、一次構造をcDNA側から決定することを試みている。部分精製標品の分子量はゲルろ過カラム及び活性染色の結果から、約分子量5万と推定された。Maltose binding proteinとH^+, K^+-ATPaseα鎖のGly^2からGln^<111>を含むpeptide部分からなる融合蛋白とその変異蛋白を用いた実験から、上記kinasesによるvanadate存在下でのリン酸化には細胞質に存在するH^+, K^+-ATPaseα-鎖のN-terminalを含む最初のsoluble domainで充分であること、又Tyr^7のリン酸化にはTyr^<10>のリン酸化が必須であることも示された。 3)Maltose結合タンパク及びGlutathion transferaseとH^+, K^+-ATPaseのN末端部位の融合タンパクを大腸菌を用いて多量発現する系を構築し、現在、リン酸化部位と相互作用するタンパクの同定を試みている。
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