研究概要 |
Na,K-ATPaseのsteady stateにおける最大のリン酸化酵素量と種々の化学修飾及びATP又はacetyl phosphateで生じる動的な構造変化の解析結果はNa,K-ATPaseが4量体構造をとることを示している。 H,K-ATPase触媒鎖Tyr-10とTys-7のkinaseによるリン酸化はCaに依存せず一方Ser-27のそれはCaを要求することが明らかになった。またこれらリン酸化に関与するProtein kinasesとPhosphatasesの同定を試みた結果、Ser-27のリン酸化には80kDのconventional PKCがTyr残基のリン酸化にはSRCのC-末端部位に対する抗体とは反応するが、N-末端部位に対する抗体、Yes及びLynに対する抗体とも反応しない、新奇の60kDのTyr-kinaseの関与が明かにされた。一方Phosphatasesについて免疫学的に区別しうる数種の活性の存在があきらかにされたが、脱リン酸化に直接関与する分子種の同定にはいたらなかった。又同一の触媒鎖のTyrとSer残基が同時にリン酸化を受けるか否かにかんしては、否定的な結果がえられた。外来性の基質を添加しても両KinasesはもっぱらH,K-ATPase触媒鎖N-terminalのリン酸化のみを行い、表面活性剤の存在で初めて添加した基質がリン酸化された。これらの結果その他はH,K-ATPase触媒鎖N-terminalのごく近くに、特異的にTyr-10,Tyr-7及びSer-27残基の可逆的リン酸化を行う酵素系が存在することを示唆している。これらリン酸化に伴う酵素活性の変動は現在迄のところ、検出できていない。これらの結果は可逆的リン酸化が酵素活性を調節するよりむしろ細胞骨格蛋白との相互作用に関与している可能性も示唆している。
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