研究概要 |
今年度は,下記の実験事実を明らかにした. 1.ヒトsubunit b遺伝子は,全長約9,000bpsからなり,8つのエクソンに分かれてコードされており,エクソンとイントロンのジャンクションは,全てGT-AGルールに従っていた. 2.ヒトsubunit b遺伝子は,Primer Extention法と5'RACE(Rapid Amplification of cDNA End)法により,-23と+1の2カ所から転写が開始されていることが確認された.このうち,+1が主要な転写開始部位であった.これは,転写部位を決定するTATA boxが存在しないことと一致した. 3.昨年度までのRibonuclease protection assay(RPA法)を用いた本研究により,subunit b遺伝子の第1イントロン内の+160〜+186までのSp1結合配列(+171〜+179)を含む27bpに高い転写活性を持つことが明らかとなっていた.そこで,今年度は,第1イントロン内エンハンサーのSp1結合部位を含む35bpの断片(+150〜+184)を,HeLa 3SCから調製した核抽出物と反応させゲルシフトアッセイを行ったところ,4種類の核蛋白質の結合が観察された.そのうちの2つはSp-1とBTEBで,残りの2つが分子量45Kと70Kの未知の因子であることが明らかとなった.次にこれらの因子の結合の塩基特異性を調べるために,第1イントロン内エンハンサーエレメントの塩基配列の部位変異を行った合成オリゴヌクレオチドを競合DNAとして反応系に加えたところ,Sp1と70Kの核蛋白質は,+171〜+184までの塩基配列が,BTEBと45Kの核蛋白質は,+165〜+168までの塩基配列が結合に関係していることが明らかとなった.今後これらの因子を単離精製後,in vitro転写反応を行うことによってsubunit b遺伝子の制御システムの詳しい解明が期待される.
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