1. ペルオキシソーム増殖剤によるペルオキシソームタンパク質の誘導機構を明らかにするため、ペルオキシソームの脂肪酸β酸化系の初発酵素である、アシル-CoAオキシダーゼの遺伝子のエンハンサーの解析を行った。肝癌由来、および非肝臓由来の細胞を用いたトランスフェクション実験によって転写活性化に必要な領域を調べたところ、エンハンサー内部のダイレクトリピート(DR-1)配列とその直後の配列が重要であることがわかった。この遺伝子の転写活性化に必須の核内レセプターとされているPPARとRXRを用いたタンパク質結合実験によって、この配列はPPAR/RXRヘテロダイマーの結合に必要であることがわかった。 2. DR-1直後の配列の役割をより詳細に解析するため、種々の変異体エンハンサーを用いたトランスフェクション実験やタンパク質結合実験を行った。その結果、DR-1に続く4塩基の配列が重要であることがわかった。この部分をランダムにしたプローブを用いて、PPAR/RXRの結合のための至適配列を選択したところ、A・G・A or T・Tなるコンセンサス配列が得られた。さらにPPAR/RXRのDR-1への結合の極性を調べたところ、PPARが下流側に、RXRが上流側に結合することが明らかになった。このことはまた、PPARの結合にはDR-1下流側の延長配列が必要であることを示している。これらは他の核内レセプターには見られない結合様式である。 3. PPARと相互作用するタンパク質を新規に3種類分離した。そのひとつは核内レセプタースーパーファミリーに属するが、N末端にZnフィンガー型のDNA結合ドメインを欠くという特徴的な構造をもつ。このタンパク質は種々の核内レセブターとも結合することから、それらのレセプターの機能を調節している可能性がある。 4. その他、PPARがHNF-4と機能的に競合すること、PPARのN末端側ドメインに独立の転写活性化能が存在することなどを見いだした。
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