研究概要 |
核蛋白質の核への移行は、細胞質で核局在化シグナルが認識され、核膜孔まで運ばれるステップと、エネルギーを消費して核膜孔を通過するステップの大きく2つに分けられるが、本研究は、それぞれのステップに必要な因子を同定し、その性状を解析することによって、核蛋白質輸送の全体像の解明を目指している。本年度は、セミインタクト細胞によるin vitro核蛋白質輸送実験系を用いて、特に最初のステップに必要な因子の解明を進め、以下に示すような成果を得た。 1.in vitro輸送系に必要な細胞質粗抽出液を分画し、最初のステップに必要な因子を含む画分(分画I)と第2の核膜孔通過のステップに必要な因子を含む画分(分画II)とにわけることに成功した。 2.分画Iと核蛋白質を反応させると、核蛋白質を中心に大きな複合体を形成することが明かとなり、その複合体はin vitro系において、核膜孔までターゲットする活性を有していることがわかった。そこで、この複合体を核膜孔ターゲティング複合体と呼ぶ。 3.核膜孔ターゲティング複合体は、分子量54,56,66,90kDaの4つの因子から構成されることがわかった。さらに、分子量54と90kDaの2つの因子が輸送活性に必須であることが明かとなった。 4.54kDaの分子の遺伝子をクローニングし、その大腸菌発現蛋白質に対する抗体を得て、その抗体が生きた細胞で核蛋白質輸送を阻害することを確認した。 5.90kDaの分子の遺伝子のクローニングが完了し、その結果、未知の蛋白質であることが明かとなった。
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