アポトーシスの分子機構と機能

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454679
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 東京理科大学
• 研究代表者: 田沼 靖一 東京理科大学, 薬学部, 教授 (10142449)
• 研究分担者: 内海 文彰 東京理科大学, 薬学部, 助手 (00256679) ; 青木 一正 東京理科大学, 薬学部, 助手 (10184029)
• キーワード: アポトーシス / DNA分断化 / ヌクレオソーム / エンドヌクレアーゼ / DNaseγ / 胸腺細胞 / プログラム細胞死

研究概要

アポトーシスを司るエンドヌクレアーゼをウシ及びラット胸腺を用いて検討した。まず、胸腺細胞の核に存在するエンドヌクレアーゼをCM5PW高速液体クロマトグラフィーで分析したところ3種あることを見出し、DNaseα,β,γと命名した。この3分子種の完全精製を行ない、それらの性状を調べた。αとβの分子量はSDS電気泳動法でともに32kDaであったが、γは33kDaであった。αとβは二価陽イオン非依存性の酸性エンドヌクレアーゼであったが、γはCa^<2+>/Mg^<2+>依存性の中性エンドヌクレアーゼであった。また、γのみがアポトーシスを抑制することが知られているZn^<2+>で阻害された。この3分子種のアポトーシスの経過における変動を調べたところ、αとβはアポトーシスにより速やかに消失したが、γはアポトーシス細胞核に残っていた。さらに、DNAの切断様式を末端標識法で解析した結果、αとβは3'-P/5'-OH型であるのに対して、γは3'-OH/5'-P型であった。これらの性状と細胞レベルでのDNA切断様式が3'-OH/5'-P型であることを考え合わせると、DNaseγがアポトーシスのエンドヌクレアーゼであることが強く示唆される。
現在その部分アミノ酸配列を基にcDNAクローニングを行ない、その全塩基配列を決定することを進めている。

研究成果

• [文献書誌] Tanuma,S.,et,al.: "Multiple forms of nuclear deoxyribonuclease in rat thymocytes." Biochem.Biophys.Res.Commun.203. 789-797 (1994)
• [文献書誌] Shiokawa,D.,et.al.: "Identification of an endonuclease responsible for apoptosis in rat thymocytes." Eur.J.Biochem.226. 23-30 (1994)
• [文献書誌] Aoki,K.,et.al.: "Sodium benzylideneascorbate induce apoptosis in HIV-replicating Vl cells." FEBS Lett.351. 105-108 (1994)
• [文献書誌] Makino.K.,et.al.: "Change in Electrophoretic mobility of HL-60 cells by apoptosis." Colloid and Polimer Sci.272. 487-492 (1994)
• [文献書誌] Kuribayasi,N.,et.al.: "Introduction of DNA fragmentation in human myelogenous leukemic cell lines by SBA." Anticancer Res.14. 969-976 (1994)
• [文献書誌] Kojima,S.,et.al.: "Antioxidative activity of SBA and its adoriamyc in-induced cardiac toxicity." Anticancer Res.14. 1875-1880 (1994)
• [文献書誌] 田沼 靖一: "アボトーシス-細胞の生と死-" 東京大学出版会, 164 (1994)
• [文献書誌] 田沼 靖一: "アポトーシス実験プロトコール" 秀潤社, 236 (1994)