この研究課題の最終年度を迎え、以下の研究成果が得られた。 1)微小管には極性があり、有糸分裂紡錘体を構成する微小管に特徴的な極性が知られている。紡錘体両端に存在する中心体に結合する微小管の末端が(-)端であり、キネトコアに結合する部位が(+)端であることが知られている。そこで、微小管の(-)端にGタンパク質が結合することが予想された。そこで、まずGタンパク質を微小管と反応させ、ついで、抗Gタンパク質抗体による染色をして蛍光顕微鏡観察を行ったところ、たところ、微小管の全表面が蛍光染色されることが明らかになった。 一方、精製チューブリンヘテロ二量体とともに精子軸糸ダブレット微小管とGタンパク質を反応させ、zero-lengthの架橋剤(EDAC)で架橋反応させた後、SDS-PAGEで分析したところ、α-チューブリンが選択的にGタンパク質と結合することが明らかになった。そこで、α-チューブリンは微小管の壁に沿ってそのC末端を外側に突出させている可能性が考えられた。 2)中心体モデル系の確立:51-kDaGタンパク質以外の成分を同定し、その分子機能を明らかにするためには、モデルシステムの開発が必須である。それによって、Gタンパク質と共同して微小管形成(チューブリン重合)の核形成に必要な蛋白成分の分析が可能となる。そのために、ラテックスビーズを用い、その表面をGタンパク質分画で被覆し、チューブリン添加による星状体形成を行わせる条件を設定し、モデル系を確立した。現在、そのモデルシステムを用いて、チューブリン重合に必須なタンパク質成分の分析を行っている。 3)ウニ卵の無細胞系に精子頭部を加えて、精子基粒体からin vitroで微小管を形成させ、星状体を構築させる反応系を確立した。今後、その調節機構の解析が待たれる。
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