平成6年度においては、先ずFollipsinをコードするcDNAと遺伝子のクローン化を行い、次に、得られたcDNAをプローブとして、マウス卵巣の発生過程と卵母細胞の成熟過程における遺伝子発現の解析を実施する予定であった。しかし、ブタ卵巣からのfollipsin cDNA単離に手間取り、現在ようやく候補となるクローンを得た段階にあり、したがって当初予定した遺伝子解析と発生学的解析については未だ実施できていない。しかしながら、これらとは別に進めてきたfollipsinの生理的機能に関する研究では大きな成果を得ることができた。即ち、ブタ卵巣由来のFollipsinが組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPAと略す)の不活性前駆体分子を迅速に活性型分子に変換できるという発見である。tPAの活性化には、一本鎖の前駆体分子中のArg^<275>-Ile^<276>のペプチド結合の切断が必要であることは最近になって明らかにされ、これに関与するプロテアーゼの存在が示唆されてはいたものの同定されずにいた。本研究におけるFollipsinがtPAの生理的活性化酵素である可能性が強く示唆された。これらの成果については、現在論文投稿中である。また、本研究を進める過程で、ブタ卵巣濾胞液の中にユニークなプロテアーゼ活性を有する新たな分子を見いだし、その成果についても発表した。
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