平成7年度ではFollipsinのcDNAクローニングを試み、候補となるクローンを単離した。ヌクレオチド配列を決定し推定アミノ酸配列を得たが、タンパク質から決めた部分アミノ酸配列とは完全に一致しないことが判明した。しかし両者の間には極めて高い相同性が見られ、得られたクローンはFollipsinと同属のタンパク質をコードするクローンであることは明らかである。一方、これと平行して進めてきたFollipsinの生理機能に関する研究では大きな進展をみた。即ち、Follipsinが組織型プラスミノゲンアクチベータを迅速に活性化する作用を有することを発見した。さらに体外受精の治療を受けている患者由来の卵胞液にもFollipsinと同様の機能をもつタンパク質の存在を確認でき、その単離にも成功した。現在、酵素学的および物理化学的性状の解析を進めている。“研究発表"の項に示すように、今年度の成果として5編の論文を公表した。 尚、これまでの研究によって、Follipsinの機能が次第に明らかにされつつある。当初その生理機能については、卵胞の成長過程と連関した役割を担っていると想定したが、本酵素は哺乳類の排卵過程に関与していることが強く示唆されるに至った。従って、当初計画した発生工学的アプローチによる機能解明を進める学術的意義は薄れたと考えており、本タンパク質の排卵への関与をより明白にする実験系を導入する予定である。
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