(1)上顎神経節(SCG)細胞の神経細胞死と細胞内Ca2^+との相関 脱分極シグナルの発達に関して、種々の発生段階(E16-P7)のラットSCG細胞及びそれらをNGF処理した時間経過を関数として調べた。その結果、L型Ca2^+チャンネルの発達が最も重要であることが、細胞内Ca2^+濃度のfura-2標識による蛍光画像解析及びRT-PCR法によるL型Ca2^+チャンネル量の測定から判明した。更に、高K^+培地処理による細胞生存は細胞内Ca2^+濃度の上昇によるとすれば(Ca2^+セットポイント仮説)細胞死においては細胞内Ca2^+濃度の降下が起こるはずである。実際、細胞内Ca2^+濃度をBAPTA-AM等でキレートした時、細胞死は遅延した。 (2)小脳顆粒細胞の細胞死とその発達 生後8日目のラット小脳から顆粒細胞を分離し、培養すると7日目で細胞死が起こった。これが発生過程での細胞死に対応する事を示した。それは、その細胞死がシクロヘキシミド、脱分極、BDNFで抑制されること更にアポトーシスであることを示した。又、trkBの存在もRT-PCR法及びanti-trkB抗体を用いたimmunoblotで確かめた。実際、小脳顆粒細胞は外顆粒層から内顆粒層に移動する際、trkBの発現が見られることが明らかになり、その後のシナプス形成で栄養因子依存性を獲得することに対応していると考えられた。 (3)上顎神経節細胞のNa^+イオンを介した神経細胞死とその発達 膜電位依存性Na^+チャンネルの活性化剤であるベラトリジンはNGF除去による上顎神経節細胞の細胞死を抑制することを見いだしたが、この効果はNa^+イオンの細胞への流入によるものであった。一方、Na^+イオンが過剰に流入すると神経細胞死を誘発し、その効果は神経細胞の成熟に伴って増強された。
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