研究概要 |
平成7年度の研究計画は次の三点から成っていた。即ち(1)卵膜主要サブユニットの内のZI-1, 2群の前駆体のcDNAをクローン化し、その分析を行う、(2)メダカ(及びニジマス)の未硬化卵膜のZI-1, 2及びZI-3を精製し構造を調べる、および(3)硬化卵膜タンパク質構造の中で特に硬化に関係し、又は孵化酵素作用に敏感な部分の構造を明らかにする、ことであった。 (1)に関してはZI-1, 2の前駆体であるH-SFを腹水から単離・分析しているが、3種の分子量の近接した(74-76K)タンパク質群であるために個々のタンパク質に関するcDNAはクローン化していない。しかし、この3種とも、ペプチド構造はほとんど同一ではないかと思われる。現在、全長に近いcDNAクローンが得られており、1795bpより成っている。この中にN-グリコシド糖鎖結合可能部位は3ヶ所あるがグリコシダーゼ消化実験によると、大型糖鎖存在の可能性は低い。ノザン解析の結果、L-SFと同様、産卵雌およびエストロゲン処理雄の肝臓にのみ発現する。 (2)未硬化卵膜サブユニットからGuHclにより自然状態に近く溶解され単離されたZI-3は、その前駆体であるL-SFとほぼ等しい一次構造を持つがC-末端側にL-SFに存在するペプチド鎖を欠いている。このことは、前駆体のこの部分の除去が分子集合に必要であろうことを予想させる。付活による卵膜硬化機構はメダカ及びニジマスについて共通の原理によって行われる可能性が見えてきた。即ち、ZI-1, 2サブユニットの部分的分解と、それによって低分子化したサブユニット間にトランスグルミナーゼにより架橋が形成されることである。 (3)孵化酵素(とくにHCE)により硬化卵膜からプロリンとグルタミンの含量が高く、γ-Glu-ε-Lys架橋に富むドメインが切り出されるが、これは主にZI-1, 2サブユニットに含まれることが判明した。 (4)上記(1)、(2)、(3)の結果に基づいてメダカ卵膜内層の構造とその構築に関する仮説を作りつつある。
|