研究概要 |
1)myogeninノックアウトマウスの形態学的解析を行い、Myogeninが筋細胞分化に必須であることを明らかにした。4種のMyoDファミリー遺伝子、Id遺伝子など筋分化関連遺伝子の発現をWhole mount in situ hybridization法により調べ、MyoD, Myf5,Idは正常マウスと同様の発現パターンをとることが明らかにした。ノックアウトマウスの四肢に少量の未成熟な筋管細胞が観察されることから、この筋管細胞でのMRF4の発現を調べたところ、正常マウスに比べて強く発現していた。この結果はおそらくMyogeninがなくともMRF4が発現することにより一部の筋芽細胞は筋管細胞へと分化できると推定される。四肢においては多くの細胞はMyoD-Myogeninの組み合わせで分化するが一部にMyoD-MRF4の組み合わせで分化する細胞が存在すると推定される。 2)Myogeninノックアウトマウスより筋芽細胞を分離し、その性質を調べた。増殖因子を取り除いた分化培地で培養するとMyogeninがなくとも筋芽細胞は筋管細胞に分化すること、また、生化学的分化マーカーの発現では正常と区別がつかないことが明らかとなった。さらにMyogeninノックアウトマウスより筋芽細胞の樹立に成功し、樹立された細胞は増殖がおそく、形成される筋管細胞が小さい。このような現象がMyogeninの欠失によっていることを確認するために樹立された細胞にMyogeninを強制発現したところ、コントロール細胞と同様な振る舞いをするようになったことから、樹立した筋芽細胞で観察された現象はMyogeninの欠失に依存している可能性が高いと判断した。 3)筋の成熟、2次筋管の形成、神経筋接合の形成など、筋組織の発生後期に起こる事柄を解析した。その結果、Myogeninは筋成熟に必須でありMRF4では代償できないこと、2次筋管細胞はほとんど形成されないこと、2次筋芽細胞が存在すること、神経筋接合部はほとんど形成されないこと、などが明らかとなった。
|