1.脳内のNO(一酸化窒素)含有神経を形態学的に調べる手法として、本研究者らが開発したNADPHジアホラーゼの酵素組織化学のほかに、NO合成酵素(NOS)の抗体を用いる免疫組織化学法がある。両者の方法によって得られる結果は、構成型NOSについてはほぼ一致するという見解が広まりつつあるが、少数ながら異論もある。そこで市販のNOS抗体を用いて、脳内NO神経の分布を調べることから着手した。入手したNOS抗体4種類を調べた限りでは、正常ラット脳においてはNADPHジアホラーゼ組織化学の結果とは一致した。しかし、脳に損傷を与えた後に出現する誘導型NOSについて調べると市販品の全ては誘導型NOSと構成型NOSの間に強い交叉性がみられた。 2.上記の結果をもとに、構成型NOSのリコンビナントに対する抗体を作成し誘導型NOSと交叉しない抗体を作成中である。結果は順調に進んでおり次年度には完成するものと思われる。 3.逆行性軸策のトレーサーとしてTrue blueを用いてNADPHジアホラーゼ組織化学と組み合わせた実験では、ラット眼動脈を支配するNO含有神経の起始は、これまでの予想に反して翼口蓋神経節にはなく三叉神経節に分布することが判明した。この事実はNO含有神経の機能的役割として新しい発見となりうる重要なもので、現在詳細に解明中である。 4.ラット脳内でNO含有神経と共存する古典的伝達物質について検索を行ってきた。現在、脳内15領域について調査を終え、残りの20領域については次年度までに完成する予定である。最も共存関係が濃厚であったのはコリン神経系であった。
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