研究概要 |
拘束ストレスや、エンドトキシン・サイトカイン投与などの炎症性刺激によるラット脳・視床下部・下垂体・副腎系におけるimmediate early genes(IEGs)の発現の時間経過と発現部位について、in situハイブリダイゼーション法(ISH法)を用いて検討した。また、fos family,jun family,zinc finger familyの各遺伝子の転写活性化が視床下部室傍核(PVH)の同一細胞において起こるということを、ISH法と免疫組織化学とのコンビネ-シヨンにより明らかにした。更に炎症性刺激によりPVHにおけるオキシトシン-NO産生ニューロンにFos蛋白の発現が多く見られることを明らかにした。更に、これらのストレス刺激が繰り返されると、IEGsの発現はNGFI-Aを除いてその反応性が低下していくことがわかった。c-fos,fos B,jun B,NGFI-Bの発現制御に対しては血中コルチコステロンのレベルが重要な働きをしているが、NGFI-Aの発現調節には関与しないということも明らかにした。今後、NGFI-Aの機能の解明のため、NGFI-Aに対する抗体や合成アンチセンスオリゴヌクレオチドの脳内注入などを行う予定である。 またc-fos遺伝子の転写調節機構の解明のため、トランスジエニック・マウスの作製を試みている。ラット脳のDNAライブラリーよりlong PCR法により、可及的長い転写調節領域を含むc-fos遺伝子(4kb以上)をクローニングすることを目指しているが、現在のところまだ成功していない。今後も継続して取り組む予定である。更に、Differential Display法により、ストレス刺激後視床下部において早期に増加を示す遺伝子群と、やや遅れて増加する遺伝子群の同定を行っている。この方法論の有用性と限界を明らかにするとともに、新しいIEGsの発見とこれらのIEGsの標的遺伝子の同定を目指している。
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