交付申請書の研究計画に基いて、本年度は「グリオスタチンの分泌機構と遺伝子発現機構の解明」の重点をおき、まずa.グリオスタチンの分泌機構の研究では、グリオスタチンに対するモノクローナル抗体を用いて、別に調整したエンザイムイムノアッセイ系で各種ヒト培養細胞のグリオスタチン分泌能を観察したところ、数種の細胞がグリオスタチンを大量に細胞外に分泌していることが分かった。しかしLDH活性との相関を検討したところ、その多くは細胞死にともない培養液中に放出されることがわかった。ただヒト滑膜細胞は生理的にグリオスタチンを分泌する能力を備えていることがわかった。b.グリオスタチン遺伝子の発現調節機構の解明の研究では、クローニングされているヒトグリオスタチンcDNA配列をもとに、RT-PCR用にプライマーセットを用意し、ヒト培養細胞(A431、GOTO)内でのグリオスタチンmRNAを定量した。TPA、Bt2AMP、グルココルチコイドで刺激すると細胞内産生誘導がみられたが、ジェノミックDNA上流にはこれらに相当する反応エレメントはSP1部位以外は存在しなかった。また各種のサイトカイン(IL1、IL8、TNFα)で滑膜細胞を刺激するとグリオスタチンmRNAの発現は著しく増加した。さらにグリオスタチン自身で茂樹しても同様に著明な発現誘導が見られることより、グリオスタチン産生はオートクリンにより調節されていることがわかった。
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