研究課題/領域番号 |
06454709
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経科学一般
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研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
松村 人志 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究副部長 (50173886)
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研究分担者 |
大坂 寿雅 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (30152101)
佐藤 伸介 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (40270574)
渡部 紀久子 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (90211672)
裏出 良博 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究副部長 (10201360)
早石 修 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (40025507)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | プロスタグランジンD_2 / 睡眠 / 吻側前脳基底部 / A_2アデノシン受容体 / 脳脊髄液 / 側坐核 / 嗅結節 / プロスタグランジンD合成酵素 |
研究概要 |
プロスグランジン(PG)D_2の睡眠促進作用に関する作用部位をラットで明らかにすることに成功した。以前から、それは睡眠中枢のひとつと信じられている視束前野であろうと予測されていたが、実験結果は、この予測が誤りであることを明確に示していた。実験データに基づき判断すると、作用部位は視束前野より吻側の領域の腹側表層部に存在すると考えられた。この領域は、Brocaの対角帯(diagonal band)や中隔域(septal region)の他、ventral striatumとも呼ばれる側坐核(sccumbens nucleus)や嗅結節(olfactory tubercle)が存在する領域で、PGD_2はこの領域の腹側脳表部に作用すると結論された。また同領域の脳血流も睡眠・覚醒状態に伴い鋭敏に変化していることも明らかになった。脳内でPGD_2の合成に関与しているいわゆる脳型PGD合成酵素は、脳表をおおっている膜組織に豊富に存在していること、脳脊髄液中のPGD_2の量が、ラットでは、睡眠期である日中の方が活動期である夜間より高値を示すこと等も明らかになったことから、PGD_2は脳表で合成され脳表で作用して、特に徐波睡眠を引き起こすものと考えられる。当該領域で、種々の神経伝達物質と呼ばれる諸物質やその他の物質について、睡眠に対する作用を検討した結果、A_2アデノシン受容体アゴニストが、PGD_2に匹敵する徐波睡眠促進作用を示すことも明らかになった。さらにA_2アデノシン受容体アンタゴニストで前処理しておけば、PGD_2による睡眠促進が有意に抑制されることも明らかになった。なお、上記ventral striatumとも呼ばれる側坐核(sccumbens nucleus)や嗅結節(olfactory tubercle)にはA_2アデノシン受容体が豊富に発現していることが知られている。脳表で作用したPGD_2により生じたシグナルが、前脳基底部のこのようなventral striatumなどに存在する機構に影響を及ぼして睡眠・覚醒の変化に至るというメカニズムが示唆された。
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