研究概要 |
本研究において平成8年度までに以下の研究成果を得た。 1.ヒトとマ-モセットおよびカニクイザルの血液・免疫担当細胞膜抗原の交差性に関する研究. a.リンパ球では,CD2,CD3,CD4,CD8,CD16,CD20,CD25,CD45RAおよびCD69等が,また造血細胞ではCD34が,それぞれの抗ヒト白血球抗体と交差性を有することが明らかとなった。 b.CD34陽性細胞の検出を行った結果,マ-モセットおよびカニクイザルともにQBEND10および561のクローンにより検出が可能であるが,細胞培養による造血コロニーは561のクローンで分離した細胞に多く形成された。 2.マ-モセットに対する放射線の感受性に関する研究 a.マ-モセットに350〜550radの軟X線全身照射を行い骨髄抑制条件を検討した結果,照射後の血液細胞に対する影響は線量依存的であり,550rad照射では30日以内の回復は認められない。また,450radの線量により誘発した好中球減少はrhG-CSF(2μg/kg/day)の投与により照射後20日前後より増加が認められた。 b.マ-モセットに^<60>Coの全身照射を行い骨髄抑制条件を検討した結果,9.5Gyの線量で照射後11日目に死亡し,マ-モセットの^<60>Coの全身照射によるLD50は9.5Gy未満と考えられた。 3.マ-モセットの骨髄移植モデル開発に関する研究 a.^<60>Coの7.5Gyを全身照射したマ-モセットに同種骨髄移植を施したが,移植した骨髄細胞の定着および増殖は観察されなかった。 b.ヒトGM-CSF遺伝子を組み込んだトランスジェニック-SCIDマウスにマ-モセットの骨髄を移植し,移植後28日目までのマウスの性状を観察した。その結果,骨髄細胞を移植されたマウスの脾臓では明らかな脾腫が観察された。 4.カニクイザルの骨髄生検に関する研究では,腸骨からの生検が安全性が高く,操作が容易な方法であった。 以上の研究結果から,小型で実験動物として確立されたマ-モセットは,ヒト代替骨髄抑制モデルのみならず免疫不全モデルとしての可能性が高いことが考えられた。
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