研究課題/領域番号 |
06454722
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山越 憲一 金沢大学, 工学部, 教授 (40014310)
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研究分担者 |
沢田 幸展 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (40045539)
田中 一男 金沢大学, 工学部, 助教授 (00227125)
小林 勉 金沢大学, 医学部, 教授 (40019922)
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キーワード | 無侵襲・無拘束循環機能評価 / 自律神経系調節 / 圧受容体反射 / 交感 / 副交感神経活動 / 容積補償法 / 連続血圧 / 最大エントロピ法 / スペクトル解析 |
研究概要 |
本年度(平成8年度)は研究実施計画に記したように、前年度まで実施してきたシステムの不備な点の再改良と、これまでの主に実験室レベルからフィールド試験で得たデータを用い、自律神経系による血圧再調節機序の解析を行うことに主力が注がれた。更に、この所見に基づき、より詳細な自律神経循環調節機能の分析のための瞬時心拍出量計測を含む新たなシステム構築に関する提案も試みた。そのため本年度では、(i)無拘束連続血圧計測システムの再改良とデータ収集及び分析、(ii)心拍出量を含む無拘束計測システムの提案研究について実施した。以下、得られた成果の概要について記す。 (i)については、前年度に引き続きシステムの基本要素であるカフ圧制御系の特性とカフの使用性能を中心に再改良を、フィールド試験と並行して行った。改良点としてカフ圧制御系(電空変換器)の周波数特性をDC〜25Hzと改善したこと、また新たな問題点として光電容積検出センサが外光に弱く、早急な対策を講じてフィールド試験が実施された。実験を行うに当り、次の仮説を立てた。即ち、循環調節に於ける交感及び副交感(迷走)神経活動は相互に拮抗的に働き、日常生活の行動負荷が大きくなるに従って迷走活動は抑制され、交感活動が亢進される、と言うものである。従来の実験室レベルでの生理学的所見を念頭に置き、この仮説の妥当性を検証したところ、最高血圧(SBP)と心拍間隔(IBI)から得られる圧受容体-心臓反射感度(BRS)及びIBIの高周波数領域(0.15〜0.5Hz)におけるパワスペクトル密度(HFIBIパワ)は行動負荷が大きくなるに従い小さくなり、迷走活動の良い指標となることが示され、このことはSBPを入力、IBIを出力とした相互相関分析による周波数伝達関数からも実証された。しかし、IBIの低周波数領域(0.04〜0.12Hz)のパワ(LFIBIパワ)及びSBPのそれ(LFSBPパワ)は、行動負荷の大きさと有意な相関は示さなかった。即ち、日常生活行動下における自律神経循環調節を評価する場合迷走かつどうについては実験室レベルで得荒れた生理学的所見おほぼ一致したが、交感活動については単純なスペクトル解析では困難であり、新たなアプローチが必要であることが判明した。 (i)で得た所見から、交感神経活動の評価には瞬時末梢血管抵抗の定量的解析が必須であることが示唆され、本研究で得たシステムを更に発展させ、一心拍毎の心拍出量(CO)をも同時計測する無拘束システムの開発が重要であるとの結論を得た。そこで(ii)について、CO計測にこれまで本研究と並行して研究を進めてきた胸部電気的アドミタンス法をシステムに導入する検討が進められ、その基本設計を行った。本研究は今年度で最終年度を迎えたが、前述のように更に発展研究が期待でき、本基盤研究はその意味でも非常に有意義な研究成果が得られたと言える。
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