研究概要 |
(1)実測データとシュミレーションデータの比較-方法の定量化の確立について 平成6年度まで使用していた扇型テンションゲージに変え,特殊なインパルスハンマーを採用した。これは扇型テンションゲージを使用した場合,臼歯部への荷重が場所的な制限のため不自由であり,臨床応用を目標として変更したものである。結果,実測データは単根歯,複根歯ともに扇型テンションゲージとほぼ同様の振動パターンを示した。 (2)周波数スペクトルと歯根膜組織像の対比について サルの健全歯では約750Hzに最高値がある幅の広い1峰性のパターンを示した。また歯を完全脱臼させたときは急峻な約350Hzのピークをもつものと,幅の広い約2000Hzにピークをもつ2峰性のパターンを示した。一方,抜去歯では後者に近いパターンをしめした。そして単根歯と複根歯では異なったパターンを示した。また歯根膜にできるだけ近い状態を抜歯に付与し,同様の実験を行い検討をおこなった。しかし,抜去歯と同様の振動パターンを示した。このため,臨床応用の面からは骨植している歯の振動パターンの検討を進めることがより必要であると考えられた。 (3)臨床応用の検討について X線写真,盲嚢プロービングと振動挙動の対比をインパルスハンマーを使用し行なっており,その結果,ヒト健全歯の振動パターンは,単根歯の振動レスポンスは大きく,複根歯では振動レスポンスが相対的に小であった。振動時間も単根歯では僅かに長期化する傾向がみられた。この結果は扇型テンションゲージの場合とほぼ同一であった。またこれらの結果は,単根歯と複根歯の骨植状態の違いによるものと考えられ,歯周疾患等の診断への応用の可能性が高まったと考えられる。 しかし,インパルスハンマーを使用した場合の荷重は,扇型テンションゲージ荷重の150gよりかなり軽度となった。このため臨床上,歯の打診の適正な力についての検討が必要となった。
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