1.外洋においてシロザケに磁界外乱を与えた場合の行動追跡実験 本研究はサケの回遊に際しての進路決定に、磁気コンパスがどの程度有効に働いているのか、実際に外洋上で検証することを目的としている。日本に回帰中のシロザケの成魚を釧路沖で捕らえ、外乱磁界発生用コイル、コイル電流制御装置および追跡用超音波発振器を取り付けたうえ、放流してその行動を追跡する事を計画した。 今年度は親のシロザケ4匹について、それぞれ上記の外乱磁場発生装置を取り付け、合計約67時間に亘る追跡実験に成功した。追跡中に外乱磁場が発生したにも拘らず、サケの行動にはそれ以前と顕著に異なる変化は見いだせなかった。従ってサケはこの海域では方位の決定に磁気を最優先的に用いているわけではないと推定される。なお興味ある行動として、サケが遊泳方向を変える場合には、一旦速度を落としていることが観測された。この結果は今後サケの行動を考える上で何らかの手がかりを与えるものと期待される。 サケ頭部からの磁性物質の抽出 サケの頭部から磁性微粒子が抽出されることは良く知られているが、それらが組織のどの部位にあるかについては必ずしも明確ではない。その理由は磁性微粒子が余りにも小さいので、微粒子以外の組織を殆ど溶解しないと見つからないためである。しかしこれでは磁性微粒子と感覚器官との関係を知ることはできないので、ここでは組織と磁性物質がついたままの状態での抽出を試みた。この結果期待したような試料を得ることができたが、磁性物質の分析や組織の正確な部位の特定は未完の状態にあり、今後の更なる研究が必要である。
|