研究課題/領域番号 |
06455008
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
広領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西原 克成 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (10010323)
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研究分担者 |
梁井 暁 順天堂大学, 医学部, 教授 (80114495)
原島 博 東京大学, 工学部, 教授 (60011201)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | 顔面変形症 / 口腔周辺の習癖 / ウォルフの法則 / 免疫疾患 / 分子遺伝学 / 生体力学 / 用不用の法則 / 遺伝子の発現 |
研究概要 |
顔面形態の外力による変形に関する研究は、究極では、力学刺激により骨と筋肉の形態が遺伝で伝えられている形態から二次的な変形を生ずる問題に帰せられる。顔に作用する外力の性質を解析し、複雑な顔面骨格の各パ-ツの形への外力の影響を明らかにすれば、脊椎動物の形態に及ぼす環境因子と遺伝要因の関係が解明される。すでに臨床的研究を通して、顔面に作用する外力のすべてが「口腔とその周辺の習癖」として一括されることを研究代表者が明らかにした。つまり、遺伝性疾患と外傷、ホルモン異常を除いて、それ以外のあらゆる顔の変形は、すべて生理的な変形であり、習癖に起因する外力に正確に対応する。これを定量化することはまだ正確には困難であるが、本研究により、外力が法則性をもって変形症を究症する機序が解明された。これは顔面骨格におけるWolffの法則の検証にもつながるものであるから、これにより顔面変形症と歯列不正の治療と予防が極めて容易となった。この「口腔とその周辺の習癖」と顔面変形症から歯列不正など骨格系疾患のみならず、鼻咽腔疾患から免疫病発症との関連性を解明した成果が広く新聞、テレビ、健康雑誌に取り上げられ、国民の健康に寄与することができた。これらをまとめて「顔の科学」(日本教文社・東京)として出版した。 筋肉や骨格の力学刺激による変形は、本研究と他の科研費研究(重点領域、総合研究A、試験研究B)の成果を統合した結果、生体力学が引き金となって起こる骨格を構成する局所の間葉細胞の遺伝子の発現に依存することが解明された。これは、形態学(系統発生学)、生理・生化学(分子生物学)、遺伝学(分子遺伝学)の三者を生体力学で統合した研究により解明されたものである。あらゆる機能は、器官を構成する細胞の遺伝子の発現によるものであり、あらゆる形態の基本も体細胞の遺伝子の発現により、組織の再生・修復からリモデリング・再生産(生殖)もまた遺伝子によるという自明のことを、真に理解した結果得られた結論である。これにより、顔面頭蓋という器官の研究を端緒として、脊椎動物の進化の様式が、ラマルクの用不用の法則すなわち生体力学主導で制御されていることを世界に先駆けて明らかにすることができ、著しい成果が得られた。
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