研究概要 |
本研究は,考古時代から現在まで過去数千年間の地表変動の歴史を復元し,地表変動と遺跡の成立・破壊の関連を検討を目的としている.本年度はこの課題の最終年度にあたる.昨年度までは,主調査地域の新潟県五頭山麓と,比較調査地・兵庫県南部地震の被災地六甲山地南麓の神戸・芦屋地域の土石流と遺跡の関連の調査が主であった.本年(最終)度から,古い地震との関連も調査課題に加えた.3年間の成果の概要は以下の通りである. 1.五頭山麓は1967(昭和47)年の羽越豪雨災害で大きな土石流災害うけた.これは,江戸時代の1646(天保3)年と1757(宝歴7)年の災害にひきつぐものであることがわかった.これをふくめ,縄文時代中期以後の約5千年間に12-13回の土石流の発生が確認できた.また,縄文時代前期(約5-6千年前)の約1000年間に,大規模な土石流が集中的に発生,流下したことが確認できた. 2.比較調査地の神戸・芦屋地域では,1938(昭和13)年の阪神大水害で大きな土石流災害をうけた地域で,ここでも縄文時代以後の土石流発生の歴史が明らかになりつつある. 3.五頭・六甲山地ともに,地盤の液状化をともなう過去の大地震と,大規模な土石流発生の関連が確認されつつある.つまり,五頭では,約5千年前,4千年前,3.5千年前頃の古い地震,六甲では,縄文時代早期,古墳時代,1596年慶長伏見の地震の後にそれぞれ土石流が発生している. 4.五頭・六甲山麓における,これらの土石流の流下は大きな被害をもたらす一方,砂層の堆積がその後の居住基盤・農地基盤として,重要な役割を果たしたことがわかってきた.これらは,両山麓部の遺跡の成立と破壊を強く支配したとみられる.
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