研究概要 |
(1)CP-Pキレート配位子錯体の化学:シクロペンタジエニル基またはインデニル基と3級ホスフィノ基をL-threitol誘導あるいはtrans-1,2-ジメチレンシクロペンタン骨格で連結した新規光学活性Cp-P配位子を合成し、ルテニウムおよびロジウム錯体を合成した。その構造を同定し、反応性を調べると共にRu錯体が末端アセチレンとアリルアルコールとの不斉炭素-炭素結合生成反応の触媒として有用なことを見出した。また昨年度にその一般的な合成法を確立した骨格の長さを異にするアキラルなCp-P配位子、CpH(CH_2)_nPPh_2(Cp=C_5H_4または2-C_9H_6;n=2,3,4)、を有する繊維金属錯体の化学を調べた。その結果インデニル基を有するRhCl(CO)(Cp-P)錯体に対するハロゲン化アルキルの付加反応がヨウ化エチルを用いると立体選択的に進行し、ほぼ一方のジアステレオマ-からなるアシル錯体を高収率で与えることを見出した。このことを利用して金属原子上に不斉中心を有する光学活性Cp-p錯体を合成し、不斉触媒反応へ応用することを計画している。 (2)光学活性C-Nキレート配位子を有するPd錯体の化学:光学活性N,N-ジメチルフェネチルアミンから合成した光学活性C-Nキレート配位子を有するPd(II)錯体と我々が開発しためずらしいヘリカルキラリティーを有するホスホール誘導体、(±)-7-フェニルジナフト[2,1-b;1′.2′-d]ホスホール、との反応で単離したPd錯体の結晶構造から立体選択的な反応が起こることを明らかにすると共にNMRで溶液中での動的挙動を調べた。 (3)P-Nキレート配位子錯体の化学:昨年度PdCl_2(Ph_2P-o-C_6H_4CH_2OCH_2-2-C_5H_3N)を用いてアセチレンへのメタノールの立体選択的な付加反応の中間体に相当する安定なσ-ビニル錯体が得られることを明らかにしたが、その生成経路を明らかにすると共に触媒反応を検討した。その結果Ag(I)イオンおよホスフィン類を配位子とするカチオン性Pt(II)錯体が本付加反応に高い触媒活性を示すことを見出した。
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