研究概要 |
成ネコの視神経を球後で完全に切断し、その切断端に自家坐骨神経の移植手術を行った。手術後最低60日以上たったのち動物を再び麻酔・非動化し、手術用顕微鏡下で移植片を細く裂いた線維束から銀線電極を用いて、網膜神経節細胞の再生軸索の単一ユニット活動を278個記録し、受容野とその光反応性を決定した。ほとんどの細胞が受容野中心のスポット光刺激に対して、一過性または持続性などの正常に近い反応をもっており、各細胞型への分類が可能であった。軸索再生した網膜神経節細胞の細胞型ごとの出現頻度はY細胞が48.2%、X細胞が40.6%、W細胞が6.8%、分類不能が4.3%であり、この出現頻度を正常ネコの場合と比較すると、Y細胞が最も軸索再生しやすいことがわかった。また、各細胞のON中心/OFF中心型を調べると、X細胞ではすべてがON型であり、OFF型X細胞の軸索が再生していない可能性が示唆された。受容野中心は大部分の細胞において、正円に近い楕円形をしており、その直径の大きさは全体として、網膜周辺部にいくにつれて増加する傾向を示した。また同じ偏心度においてはY細胞とW細胞は、X細胞よりも大きな受容野を持ち、正常網膜での傾向が保たれていた。しかし、軸索再生した網膜神経節細胞ではY,X,W細胞ともに正常でのそれらの細胞と比較して網膜の中心部での受容野中心が拡大していることが明らかとなった。
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