研究課題
本研究については、これまで2年間にわたって各研究分担者がそれぞれの研究分担領域について活発な研究を行なうと同時に、その成果について定期的な研究会を開催し、他の分担研究者から忌憚のない批判的検討と評価を受けることによって、その後の研究深化や問題関心の拡大のためのひとつの重要な手がかりとしてきた。最終年度である本年度においては、これらの実績に立脚することによって、さらにまたソフトウェアとして既に購入していたCD-ROM判のOEDやインテレックス社のデータ・ベースを活用することによって、各研究分担者はより一層研究を発展させ、「自然法則」、「自然法」の概念変遷および、これら両概念と緊密な関係をもつ現代的諸問題に関して新たな展望を切り開くことができた。以上のような研究活動によって得られた成果をいくつか列挙すれば、1)古代イスラエル民族における法と契約について新たな洞察が得られたこと、2)12世紀のプラトン主義的なシャルトル学派においてヨーロッパの自然法則概念がかなり大きな発展を遂げたこと、3)17世紀王制復古期のイギルスにおける社会動向とカンバーランドの自然法概念の関係について新たな知見が得られたこと、4)西洋近代思想定着期における自然法則と自然法に関する多様な見解を調査・集約できたこと、5)現代イスラム社会における西洋近代科学導入問題を因果論と自然法則との関わり合いにおいて概括することができたこと、6)今日ますます重要かつ緊急の問題となりつつある生命倫理の問題との関連において、自然的なるものの規範的意義と現代自然法論の射程を具体的に分析することができたこと、などである。
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