計画年度終了約1年間をかけて、これまで行ってきた4'-チオ核酸類の当該研究について、有機合成化学上の問題点ならびに合成した4'-チオ核酸の抗ウイルス活性および抗腫瘍活性における問題点を再度詳細に検討して、それぞれの正確なデータを求めた。 具体的には、4'-チオ核酸合成上の問題点としてチオ糖部分に塩基部分を導入するグリコシル化反応におけるβ選択性を向上させるべく検討を重ねた。その結果、チオ糖部の3位および5位の水酸基保護基のかさ高さを変えることにより幾分β選択性向上が観察されたが依然としてα体が主生成物出あることには変わりが無かった。一方、抗ウイルス活性においてAZTと同等の強力なHIV活性を有するD型4'-チオチミジンおよび4'-チオ-2'-デオキシシチジンでは再現性ある活性が観察された。しかしながら、同時に正常細胞に対する細胞毒性も大きなことがわかった。また、抗腫瘍活性についてもこれまで合成してきた4'-チオ核酸類について再試験した結果、ほぼ前年度の結果と同じ活性を表した。 本年度はこれら全体をまとめるとともに、この分野の現状を加えた総合論文を総説誌に発表した。
|