この研究は、緑に対して市民がもっている意識を様ざまな角度から問い、その多元的な構造を明らかにし、環境の改善・再生に寄与し得る実践的な方法を提起しようとしたものである。ことに意識構造の解明にあたって都市、農村といった地域性や、さらには日英といった国民性による対比を試みた。分析手法として林知己夫博士の数量化3類を用いた。分析の結果、都市の緑に対する市民意識はつぎのように解明された。 1日英両国に共通の意識構造軸は、一つは「緑に対する関与の姿勢」で、「積極的関与か、消極的関与か」に分化し、もう一つは「関与の対象」で、「自然物志向か、人工物志向か」に分化している。 2これら2本の構造軸を組合せ、つぎの日英共通の4つの意識類型を設定できた。 (1)積極的関与+自然物志向 (2)積極的関与+自然物志向 (3)積極的関与+人工物志向 (4)消極的関与+人工物志向 3これら共通する意識構造、意識類駅に対し、構造軸解釈の補助概念、「公園」のような「みどり」にかかわる言葉の解釈、構造軸の優先順位等に、日英間の違いがあらわれた。 4サンプル分布図では、日本側で「積極的関与+人工物志向」(人工的な「みどり」を対象に積極的直接的に関与しようとする類型)に、また英国側で「消極的関与+自然物志向」(自然界の'green'を対象に消極的に距離をおこうとする類型)に片寄る傾向がみられた。 今後両国間の分化交流や、環境再生に向けてのパートナーシップ関係の構築にあたって、本研究で解明された日英両国の意識構造、意識類型の共通性と差異性が充分配慮されるべきであろう。
|