研究概要 |
日本列島を特徴付ける様々な地質現象(例えば火山活動、断層や褶曲の形成、変成作用、鉱床の生成など)の多くは厚さ30km余りの地殻の中で起こっている。地殻内部に相当する8000気圧までの圧力領域を実験する上で、主要な装置は内熱式のガス圧発生装置である。我が国では2,3の例外を除いて内熱式ガス圧装置の開発はほとんど行われなかった。我々は本試験研究で地殻深部でのマグマの生成や変成作用、交代作用などの地学現象を研究し得る8000気圧の内熱式ガス圧装置(SMC-8000)の設計製作を目指した。平成6年5月には科研費の内示を受けてから数カ月間に高圧ガス保安協会(KHK)と詳細な打ち合わせを行った。現行の高圧ガス取締法の基準に合わせると、8000気圧の最高圧力では圧力容器に付属するバルブ類の設計寿命が30回以下となり、装置の効率的な運用に重大な支障をきたす。そこで最高圧力を8000から5000気圧に変えてSMC-5000を製作することになった。神戸地震の影響もある中で、SMC-5000は無事平成7年3月本体がKOBELCO高砂工場で完成した。平成7年9月までに東工大で電熱炉、加熱ユニットを製作し、各種の試験を経て11月に東京都の完成検査を受けた。我々はSMC-5000を用いてH_2Oに飽和した玄武岩質メルトを5kbの圧力でガラス化することにガス圧装置としてはじめて成功した(宮城;他,1996)。今後はSMC-5000装置を用いてH_2Oに飽和した各種のシリケイトメルトを急冷凍結することにより、Burnhamらに代表されるシリケイトメルトの飽和含水量測定をやり直す計画である。SMC-5000は長期間(1カ月以上)安定した温度圧力の保持が可能である。そこでこの装置を用いて現在角閃岩の融解実験を行っている。角閃岩の融解実験結果と日本列島の第四紀火山岩の斑晶鉱物組み合わせに基づいて、日本列島の下部地殻の化学組成とその温度構成を推定する研究が進行中である(高橋,1996)。
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