研究概要 |
本試験研究はマイクロ波による電力伝送システムにおける送受電能動アンテナの技術的検討,低コスト・高効率なシステムの開発を目的としている.本年度は送電アンテナ素子および位相制御用マイクロ波回路の設計・試作に関して以下に示す新しい知見と成果を得た.まず始めに,送電アンテナ素子としてキャビティ付スロットアンテナの使用を提案した.高さが低く.単純化した給電構造を有する素子について実験的設計を行い,反射損20dB,最大放射利得5.75dBiの特性を実現した.さらに,アンテナ素子の理論的設計手法を確立することを目的として有限差分時間領域(FDTD)法を上記アンテナ素子解析に適用することを提案した.FDTD法によるアンテナ素子の解析手法の定式化を示し,解析ツール(計算機ソフトウエア)の構築を行った.解析結果と測定結果の比較から,両者の特性は良く一致しており,実験結果の妥当性および解析ツールの有効性を確認した. 次に,マイクロ波回路の設計を本年度備品費により購入した高周波回路解析システムを用いて行った.これら回路素子は送電アンテナアレーのビーム走査に必要な2.45GHz発振器,増幅器,電力分配器,帯域通過フィルタ,ハイブリッド,整合回路,移相器および位相検出器である.回路素子設計を行いながら,解析システムの利用法を修得した.今後,回路の試作を行うことなしにあらゆる回路およびそれらから構成されるシステムの特性評価が計算機上で実現できる仮想実験環境(virtual experiment environment)の構築を目指す.本年度試作を行ったマイクロ波回路素子は来年度実験を予定している送電アンテナアレーに使用する. 以上報告したように,本年度予定していた研究課題はすべて明らかになった.
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