研究課題
試験研究(A)
本年度始め交付申請書に記した今年度の研究計画は、殆どが実行され、期待した成果が得られた。2頭のアカゲザルが、モンキーチェアに座って視覚反応課題(ディスプレイ場の手掛り刺激の色が変わると、キ-から手を離す(上腕二頭筋が主に働く))運動を行っているとき、H_2O^<15>を静脈注射して2分間のPET測定を行った(測定スライスが8mm間隔なので、4mm間隔の脳スライスのデータを集めるため26回の測定を行った)。サルの訓練、モンキーチェア作製、脳のMRI撮影も全て予定通り順調に進んだ。測定に使ったサルの1頭は実験殺し、ニッスル標本を作成した。脳のスライスレベルに対応するニッスル標本が得られ、MRI像と対応させることができた。手掛かり刺激に反応する領域(第2次視覚野で下方の視野に対応する所など)、手放し運動に関連して働く領域<上肢の運動野(対側)、手の運動前野(同側と対側)、PreSMA野(対側)、手の補足運動野(同側)、帯状運動野(前部と後部と対側)、46野(同側と対側)>を決定することができた。この結果は北米神経科学会で発表した。サルのPET研究で成功した最初の報告となった。働いていた領域の大部分はニューロン活動の解析が行われていた領域なので、新しい運動関連領野を発見した訳でなく、どこが運動の時に働くかをはっきりさせた。従来の人間でのPET報告に比べて、働いた領域を解剖学的に同定できるが、目下、脳標本を顕微鏡下で観察を続けているため、同定は完了していない。この作業が遅れたのは、PET測定終了後、標本作成に物理的時間が必要なので、やむを得ない。単なる随意運動ではなく、判断して手を動かす課題(ある刺激に対して手放しし、別の刺激に対しては何もしない)での測定を生存しているサルで行っている。
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