安全運転にとって危険感受性能力はもっとも重要な能力の一つといえる。顕在的危険源や潜在的危険源をあらかじめ予測することによって速度をおさえたり、実際に危険が発生したときの対処のための反応を速めることができるからである。さらに自分自身のなかに存在する危険性(たとえば、自己中心性や攻撃性など)を認知することは自己の客観視、さらに自己コントロールを可能にし、他者中心の行動へと導き、他のドライバーとのコンフリクトを防ぐ役割をはたす。本研究はこのような危険感受性能力の診断と教育をめざし、コンピュータを利用したCAIシステムを完成させた。本システムは特に初心者と高齢ドライバーの教育に有効性を発揮できると期待される。初心ドライバーは特に外在する危険源知覚の能力が低い。また、高齢ドライバーは内在する危険源についての気づきが要求される。無事故無違反を続けてきた高齢ドライバーは加齡とともに低下する能力に気づくことなく運転能力の過信へとつながりやすい。自己の能力の客観的な能力を冷静に理解すること、すなわち、どこに衰えをきたしたかを知ることは適切な対応行動を可能にする基本である。本研究ではさらに、高齢ドライバーにたいし、免許更新時講習会をひらき、本研究において開発されたCAIシステムを用い、受検者の危険感受性能力の診断をおこなって客観的理解を促し、安全運転のための自己の課題を特定するよう援助することを目的に実験教育を行なった。参加者からは従来の講習とは違いその具体性と体験型の教育ゆえに高い評価を受けている。
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