研究概要 |
本研究の特色は,研究代表者達により新しく開発された二次元イオン検出素子を改良し,それをイオン顕微鏡型二次イオン質量分析装置に結合させることにより,研究代表者により提唱されている同位体顕微鏡システムを実用化させることである.予算執行年度年度初年度である本年はイオン検出装置を二次イオン質量分析装置に組み込むハードウェアとそれを制御するソフトウェアのプロトタイプシステムを完成させた.本システムの概要とそのプレリミナリーな性能は二次イオン質量分析法における最大の国際学会において報告され,論文が印刷中である.これにより,同位体顕微鏡の基本性能は達成されたことが証明された.また,この成果を応用して,原始太陽系の起源と進化を探るために,隕石の酸素同位体比の二次元分布が測定された.この測定により,隕石中の酸素の同位体異常が46億年前の太陽系形成紀に獲得した初生的なものであることが証明され,従来の二次的生成説を覆すこととなった.この成果は国際雑誌(Earth Planet.Sci.)に掲載された.また,地球において地殻がはじめて形成された時代の研究にも応用された.20億年より古い地殻の年代は,ジルコンという数十ミクロンの微小結晶中のウランと鉛を測定することにより決定できる.我々はこの測定に日本ではじめて成功した.世界での2番目の成功例である.その成果は早速地球誌に速報され,現在そのフルペーパーが国際雑誌(Geochem.J.)に印刷中である.このように世界初の同位体顕微鏡はいまだ開発途上であるにもかかわらず,そのプロトタイプを用いて,新しい成果が続々と得られはじめている.次年度は,研究計画にしたがい,新しい検出素子の開発を試み,同位体顕微鏡の性能アップに挑戦する.
|