研究概要 |
本研究は,固液界面反応を"その場"で,かつ高速の時間分解で追跡し,反応過程を分子レベルで解析する新しい赤外分光解析法を開発することを目的としたものである.目的とする新解析法は,「表面増強赤外分光法」,「時間分解赤外線光法」,「二次元赤外分光法」のいずれも最新の技術を組み合わせてはじめて可能になるもので,本年度はそれぞれの基礎技術をさらに改善することと,その有機的結合方法の検討に努めた.その結果,研究計画が実現可能であることが確認できた. 1.表面増強赤外分光技術の改善 これまでの測定では測定結果の再現性があまり良好でなかったが,電気化学的測定はSTMといった手法を用いて試料の最適作製条件を検討した結果,極めて高い再現性が得られるに至った.また,試料固体として多結晶表面しか利用できないのが本測定法の欠点であったが,単結晶表面を作製する技術を開発したことによって,さらに精緻な研究が可能となった. 2.時間分解測定技術の獲得 交付された研究費により購入した赤外分光器に改良を加えたことによって,固液界面反応をミリ秒から数秒の時間分解で追跡することがルーチンとして行える段階に達した.現在さらなる時間分解能の向上に努めており、マイクロ秒オーダーでの測定に世界ではじめて成功した. 3.二次元相関解析プログラムの開発 二次元赤外分光の提案者である野田勇夫博士の支援のもとにプログラムを開発し,測定した時間分解スペクトルの解析を行った.その結果,反応過程で生じる微量の生成物が明瞭に検出することができ,当初予想したとおり本法が反応解析の手段として有効であることが確認できた. 以上の基礎技術の確立過程で,いくつかの反応過程(酸化還元過程,吸着・脱離過程,配向変化など)を検討したが,永年にわたって多くの議論の対象となってきた固液界面の電気二重層構造をはじめて明らかにしたという大きな成果が得られた.
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