放射光全反射蛍光X線分析による生体試料中のAlの定量法の開発をを、試料の前処理法、内標準および測定条件の検討を通じて行った。試料はAl標準液およびAlを投与したラットの臓器を用いた。試料の前処理法は、酸素気流中で乾式灰化し、硝酸および過酸化水素による酸分解が有効であった。内標準は、エネルギー、共存元素、試料調製の点でCrが最適であった。励起X線のエネルギーとしては大気中では7.25keVが励起効率が良いことがわかった。本研究により放射光を用いると、全反射蛍光X線分析により大気中の測定でも、生体試料中の10ngオーダーのAlの定量が可能となることが明らかになった。今回の実験では、試料板として臨床分析において実用性が高く入手が容易なパイレックス基板を用いて検討したが、パイレクッス板に含まれるSiの妨害により測定条件が限られた。今後はチッ化ホウ素BNなどのSiを含まない試料板を用いることによって、さらに微量のAlの分析が可能になるものと考えられる。また、今回は放射光実験施設ビームライン4Aに設置された測定装置の都合上、大気中での測定を検討したが、真空中で測定可能な実験装置を組み立てることができれば、励起X線のエネルギーをもっと下げることができるので、励起X線と蛍光X線の強度の向上がはかれ、飛躍的な感度の向上が期待でき、さらに高感度なAlの分析法となるので、今後検討していく計画である。
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