アルミニウムの毒性の研究には動物実験が不可欠であるが、モルモットなどの小動物の微小組織の微量のアルミニウムの分析を行える適当な方法が従来なかったことが、研究上の大きな障害となっていることに申請者らは着目した。そこで、本研究では生体試料中のアルミニウムの全反射蛍光X線分析法の基礎的検討を行い、分析法として確立し、実際の臨床医学上の諸問題に応用することを目的とした。生体試料のアルミニウムの放射光全反射蛍光X線分析は世界でも初めての試みである。 まず、交付された研究費を使って生体試料分析用蛍光X線分析装置を設計、製作した。本装置により1台で全反射蛍光X線分析と2次元イメージングが可能である。励起源としては、放射光と実験室系の両方を用いることができる。本装置を使って以下の実験をおこなった。まずAlの分析のための試料の前処理法、内標準および測定条件の検討を行った。試料はAI標準液およびAIを投与したラットの臓器を用いた。試料の前処理法は、酸素気流内で乾式灰化し、硝酸および過酸化水素による酸分解が有効であった。内標準は、エネルギー、共存元素、試料調整の点でCrが最適であった。分析では7.25keVのX線を用い、大気中で数10ngオーダーのAIの定量が可能となった。また、本法をシスプラチン投与マウスの白金濃度の実験室系での定量に応用し成果を得た。さらに、放射光励起蛍光X線2次元イメージング法により、生体成分の2次元分布を非破壊で分析する方法を開発し、ガン組織中の銅、亜鉛の分析等に広く応用した。
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