入射角可変可視紫外内部反射分光光度計を設計、試作した。この分光光度計は光源(ハロゲンランプ)、分光器、入射角可変機構および恒温ジャケット付内部反射セルおよび光検出部から構成されている。光は、三本の光ファイバーを用いて、光源から分光器へ、分光器からセルの光入射部およびセルの光出射部から検出部へと導かれる。反射セルは半円筒形プリズムを組み込んだガラス-溶液界面検討用セルと円筒型の液-液界面検討用ガラスセルの二つのセルを作成した。この分光光度計の特徴は、光ファイバーを使用により入射角を30°から90°の広い範囲に渡って変えることが出来るため、界面から数μm以内での溶液領域のスペクトル測定が可能であることや入射角と受光角を独立に設定できるために吸収スペクトルだけでなく蛍光スペクトル測定にも用いれることである。さらに、光入射部と受光部にそれぞれグラン・トムソンプリズムと偏光板を取り付けたことにより、偏光解析も可能である。ガラス-溶液界面で吸着しないことが既に知られているモデル化合物(ブリリアントブルー)を用いて、入射角を変化させてスペクトルを測定したところ、臨界角以上で入射角の増加に伴い-侵入の深さの減小に比例して-反射吸光度が減小した。このことは、試作した分光光度計が予定した性能をもつことを示すものである。現在、水溶性ポルフィリンのガラス-溶液界面での吸着挙動を検討しているが、界面活性剤存在下において、この化合物のプロトン付加体はガラスに吸着せず、非プロトン付加体が吸着することを見い出している。これは、プロトンとの平衡定数から予想した結果を、直接、界面のスペクトルの形から裏ずけたものと言える。今後、熱力学的な取り扱いと構造化学的な検討を比較しながら研究を進める予定である。
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