昨年度(平成6年度)に製作した入射角可変可視内部反射分光光度計の基本的な性能を検討した。入射角の広がりは理想的には0°であるが光源として白色光源のハロゲンランプおよび光学系をオプティカルファイバーで構成したため広がりは±1.5°であることが判明した。しかしこの程度の広がりは臨界角付近の測定を除いて、全内部反射スペクトルの測定に大きな影響を与えることはない。一方、入射角が可変であるため任意に界面における光の侵入の深さ(光路長)を変化させることができることを水溶性色素を用いてガラス-溶液界面で検討した。その結果、反射吸光度と入射角から計算される有効光路長の間には良好な比例関係があること及びその傾きが色素のモル吸光係数に等しいことが確かめられ、この分光光度計が設計から予想される性能を満足していることが示された。この内部反射分光光度計を用いて水溶性ポルフィリンのガラス-溶液界面での吸着挙動を検討した。水溶性ポルフィリン(テトラフェニルポルフィリンスルホン酸)が、陽イオン界面活性剤の存在下において界面でイオン会合吸着を起こすことを内部反射スペクトルの測定により直接証明することができた。さらにこの吸着のpH依存性からポルフィリンの吸着種は非プロトン体であることや高いpH領域ではガラス表面の帯電状態が吸着に大きな影響を与えていると考えられる実験結果など今まで間接的にしか想像できなかった界面の状態を「その場」で直接的に観察することを可能にした。現在、液・液界面を用いる分析法の基礎的検討法としてこの方法の応用、検討を考えている。
|