入射角可変内部反射分光光度計を試作し、その基本的な性能を検討した。入射角の広がりは理想的には0°であるが光源としてハロゲンランプを使用し光学系をオプチカルファイバーで構成したため広がりは±1.5°Cであった。しかしこの程度の広がりは臨界角付近の測定を除いて全内部反射スペクトルの測定に大きな影響を与えることはない。一方、入射角が可変であるため任意に界面における光の侵入の深さ(光路長)を変化させることができることをガラス表面に吸着しない水溶性色素を用いてガラス-溶液界面で検討した。その結果、反射吸光度と入射角から計算される有効光路長の間には良好な比例関係があること及びその傾きが色素のモル吸光係数に等しいことが確かめられこの分光光度計が設計で期待した性能を満足していることが示された。この内部反射分光光度計を用いて水溶液性ポルフィリンの陽イオン界面活性剤存在下におけるガラス-溶液界面での吸着挙動を検討した。水溶液ポルフィリン(テトラフェニルポルフィンスルホン酸)が界面活性剤とイオン会合吸着を起こすことが内部反射スペクトルの測定により容易にしかも「その場」観察で直接証明することができた。さらにこの吸着挙動のpH依存性から吸着するポルフィリンの化学種は非プロトン付加体であることや高いpH領域においてはガラス表面の帯電状態がポルフィリンの吸着に大きな影響を与えている考えられる実験結果が得られ、今まで間接的にしか研究できなかった界面の状態をありのまま「その場」で観察することが、この分光光度計の試作によって可能となった。現在、さらにこの分光光度計を液液界面の基礎的検討法として確立するために研究中である。
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