本研究の目的は遺伝子発現制御系を構成する転写制御因子とそのターゲット遺伝子、この両者の相互作用の結果である「ターゲット遺伝子の発現」を種を越えて定量ならびに定性的に捉えるための解析手法を開発することである。このために、遺伝子発現制御系として転写制御因子POUとそのターゲット遺伝子を選び、以下の各項目を段階的に進め、系の開発をおこなった。 (1)転写制御因子POU蛋白の分離・精製 (2)POU蛋白のターゲット遺伝子の分離 ターゲット遺伝子を分離するために、抗体法(POU蛋白に対する抗体をもちいて、POUが結合したDNA領域をその複合体として抗体アフィニティー・カラムにて分離する方法)とDNA結合法(POU蛋白が結合したDNA領域をメンブレンに対するアフィニティの違いにより分離する方法)の2つの独立した方法を試みた。しかし、POUのように一次構造上の類似性を有する遺伝子ファミリーを形成している転写制御因子の場合、抗体法では用いる抗体の特異性(paraloguesに対する交叉性)が問題となった。結果として、DNA結合法によりターゲット遺伝子の分離を試み、成功した。 (3)ターゲット遺伝子の構造ならびに機能解析 現在までに分離されたターゲット遺伝子は2つである。決定した塩基配列からは、既知の遺伝子あるいはそれらと類似性のある遺伝子ではないことが示され、現在その詳細な分析を継続中である。 (4)種を越えた遺伝子発現調節の解析 POU蛋白そのものの転写制御活性を生物種を越えて解析するために、酵母由来のGAL4の系を組み立てた。
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